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柴草玲(しばくされい) Tango de SA-GE-MA-N.

ナタ友


深夜のスーパーに行った。
高級トイレットロ―ルを買うためだ。
トイレットペーパーの百檀の香りに、束の間の癒しを求める女、それはたたみ。

精を付けようと、うなぎでも買おうとしたのだが、
見ただけで吐き気がした。
仕方なく、フルーツジュースやレトルトのポタージュなど買って帰る。

マンションに着いた時、
あ、今ここに『ナタ男』がいても全然怖くないな、と思った。
感情の何かがマヒしてるのか、振り切ってしまっているのかはわからない。

ナタ男に屈託無く、
「あたしにもやらせてください」とか言って、
おぼつかない手つきで真似して植え込みを切り付け、
「けっこうチカラいりますね」とか言って。
その後は、一緒に階段に腰かけて、ナタ男の話を聞くかもしれない。

「世の中、結局口の達者な人が生き残るんですかねぇ」なんて言いながら、
もらいタバコなんかするかもしれない。


じゃ、またそのうちナタりましょう、
なんてお互いの部屋に帰ってゆく二人は、
男も女も関係無い、ただの弱き人間同士だ。

ただし、最初の時点でナタ男に歓迎されなかった場合、
シーンは一瞬にしてB級ホラーとなるだろう。
マイバッグを持った私は、
おでこの真ん中にナタをきれいに食い込ませたまま、
目を見開いて後ろに倒れる。

まあ、それもまた良し。
by reishibakusa | 2010-07-17 02:13