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柴草玲(しばくされい) Tango de SA-GE-MA-N.

なんとなく似合わなくなったワンピースを、(夏アケタ:そのⅠ〜8/22)



3軒目のリサイクル店で、
ようやく100円で引き取ってもらう。
まあ、捨てるよりは良しとしよう、と、
100円受け取って振り向いたら、
同じ店内に、サックス奏者の纐纈雅代さんがいた。

おおお、お久しぶり、と、思わず声をおかけする。
楽器ケースを背負ってらっしゃる。
今夜は"アケタの店"に出演、とのこと。

それならばあとで寄ります、と告げて、先にその店を出たものの、
今日の自分はあまりにすっぴんだし、部屋着の延長過ぎる。
(と言うか、出かける直前までその服のまま汗だくで昼寝をしていた)

ライブに伺うのにこれはいかがなものか、と思い、
せめて、と、諸々用足しついでに、
ドラッグストアのサンプルコーナーをさりげなく利用して、簡単に化粧をした。


今宵のアケタは、
ピアノの板橋文夫さんのセッション。
なんだかもう凄まじいライブで、すっかり興奮してしまった。
アケタのホームページを見ると、
"世界で最もジャズに肉薄できるライブハウス"と書いてあるけれど、
ほんとにその通りだな、とつくづく思う。


お名前だけはもう、昔から一方的に存じ上げていたけれど、
板橋文夫さんの演奏を生で聴いたのは、おそらく初めて。

感動した。
演奏するそのお姿は、ただただピアノを弾く動物みたいだ、と思った。

休憩時間に、明田川荘之さんが調律していらっしゃる様子も、
ライブの延長のようで、つい見入ってしまった。
(常連の方々には、見慣れた光景なのだろうと思う)


纐纈雅代さんは、純白のワンピースに、大きめのパールアクセサリー、
そして、やはり白の高いヒール。
肘から手首にかけてのタトゥーが、一段と際立って見えた。
演奏される音は、すべての内臓と直結していると言うか、
瞬時に紡がれてゆく旋律を途中でいきなりスパッと切ったら、ブシューと血が吹き出しそうであり、
あらゆる種類の喜怒哀楽と、愛がつまっているようで、
片時も、目も耳も離せず、
その純白のお姿と相俟って、とにかく美しかった。
ソロを吹いたあとの、「今なにかありましたか?」的な、
飄々とした風情も、とても印象に残った。
いいなあ。


アケタの店と新宿ピットインは、
ちょこっとだけ出演したこともあるし、たまに行くけれど、
自分の中では、心情的にとても"敷居の高い"店であり、
二十歳前後の頃のコンプレックスと挫折感と、そして強い強い憧れは、
四十代になった今もなお、まったく変わらない。
たぶん、この先も変わらないだろうと思う。
この敷居の高さを、むしろ大事にしたくなった。


纐纈さんに偶然お逢いして、
本当にラッキーな一日であった。
外に出てみるものだなあ。


そして、なんというか、
真にぶっとんでいる人は、
例えばだけれど、自分のことを、異端だとか、変人、みたいにわざわざ言わず、
むしろそういうことはどうでも良く、
自分が相当にアグレッシヴであることにすら気付かず、
寡黙に、素朴なまでに、
ひたすらマジメで、真剣なだけなのかもしれない、
ということを考えながら帰った。


アケタのS田さんが、
おかわりした赤ワインをグラスに多めに入れてくださって、
恐縮しつつ、静かに感謝。
いつもありがとうございます。
by reishibakusa | 2014-09-07 02:35