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柴草玲(しばくされい) Tango de SA-GE-MA-N.

宅録婦人Ⅱ

午後、
いつものようにコンピュウタの前で、
亀の歩みよりもゆっくりな作業をしておりますと、
耳の奥から、ヴァイオリンが調弦をするような音が聴こえてくるのでございます。

一本では無い、数本の。

ああ、とうとう幻聴が来たのだわ、
私も年取った(しつこい)のですもの、と思っておりましたら、
それから小一時間も経った頃でしょうか、
ふと窓の外に目をやりますれば、
ヴァイオリンケースを手にした中年女子がお二人、
T字路に向かって歩いて行かれました。

本物だったのだ。
ああ良かった。

何やらほっとして、
キンカンをひとつ、ふたつ、口にほおりこみ、
粘膜がしびれる感覚を楽しみまして、
雨が降り出したのは、
それからほどなくの事でございます。
by reishibakusa | 2006-03-16 23:12